「森林セラピストとは?心と体を癒す“自然の処方箋”を届ける新しい仕事」

知られざる仕事図鑑

森の力で人の心を癒す――自然の処方箋、届けていますか?

森の中を歩くだけで、心が軽くなった――そんな経験はありませんか?
実は、森林の持つ癒しの力を科学的に活かし、人々の心と体を整える“専門家”がいることをご存じでしょうか。

それが「森林セラピスト」。まだあまり知られていないこの職業は、自然の力を通じてストレス社会に新しいケアの形を提案しています。
今回は、そんな森林セラピストの仕事内容や資格、活躍の場から今後の可能性まで詳しくご紹介します。

森林セラピストとは?

「森林浴」から生まれた癒しの専門職

森林浴」という言葉を初めて聞いたのはいつだったでしょうか。今でこそ健康雑誌やテレビでも取り上げられるようになりましたが、実はそのルーツは1982年、林野庁によって提唱された日本発の概念です。

当時の目的は、自然とのふれあいを通じて健康増進を図ること。しかしその後、医学的・心理学的な観点から森林のもつリラックス効果が注目されるようになり、“森林浴”は単なる気分転換ではなく、治療的な効果があるのではないかという「森林浴」という言葉を初めて聞いたのはいつだったでしょうか。1982年に林野庁が提唱したこの概念は、当初は健康増進のための提案として広まりました。
その後、森林の持つ効果が医学的にも注目されるようになり、森林浴は単なるレクリエーションではなく、心身への治療的効果を持つセラピーとして発展していきます。

そうして生まれたのが「森林セラピー」という体系化されたプログラムであり、それを実施する専門家が森林セラピストです。
ただ自然を案内するのではなく、参加者の心や身体に寄り添いながら、自然との調和をサポートする仕事なのです。

自然の力で心身を整えるしくみとは?

森林には、私たちの体や心に働きかけるさまざまな“癒しの仕組み”があります。

たとえば、樹木が発するフィトンチッドという成分は自律神経を整える作用があり、血圧や脈拍を下げる効果が報告されています。
また、葉の揺れる音や鳥のさえずりといった自然音は、脳をリラックス状態に導き、ストレスを軽減してくれます。

森林セラピーではこうした自然の力を活かし、

  • ゆったり歩く「セラピーウォーキング」
  • 呼吸を整える「深呼吸」
  • 木や大地に触れる「五感ワーク」

といったアクティビティを通じて、参加者の心と体をリセットする時間を提供しています。

どんな仕事をするの?

セラピープログラムの設計と実施

森林セラピストの中心的な仕事は、参加者に合わせたセラピープログラムの企画と実施です。
気候、地形、参加者の年齢や目的などをふまえたうえで、「どの森で、どんな内容を、どんな順番で行うか」を丁寧に組み立てます。

例えば、

  • 高齢者には無理のない距離で休憩を多めに
  • ストレス軽減が目的の方には、深呼吸や瞑想を中心に
  • 親子向けには、自然遊びを取り入れた体験型

など、個々に最適な自然体験の時間を作り出すのが森林セラピストの腕の見せどころです。

カウンセリングや参加者のサポートも行います

実際のセラピーでは、ただ自然を歩くだけではなく、参加者の心理面にも寄り添うサポートが求められます。

事前のヒアリングやカウンセリングを通じて、ストレス状態や不安の有無、自然との関わり方を把握し、それに応じた接し方を選びます。
必要なときには声をかけ、無理に話しかけない配慮も含めて、**「一人ひとりにとって心地よい自然との関わり方」**を導くのも大切な仕事の一つです。

資格やスキルは必要?

民間資格「森林セラピスト」の取得方法

森林セラピストになるためには、国家資格は必要ありません。ただし、専門的な知識や技術が求められる職種であるため、民間資格の取得が推奨されています

代表的なのが、「NPO法人森林セラピーソサエティ」が認定する森林セラピスト資格です。これは、森林浴の効果や人間の心理・生理に関する理論を学び、実際のセラピーの進行方法や安全管理を含めた技術を身につけるものです。

取得の流れは以下のようになります

STEP1:講座の受講(通信・オンライン・集合研修など)

  • 基礎理論:森林の癒し効果、健康科学、心理学、環境教育など

STEP2:実習への参加

  • 実際に森林セラピー基地などでセラピー活動を体験

STEP3:筆記試験・修了認定

  • 所定のカリキュラムを終えた後、修了試験を受ける

資格取得後は、全国の「森林セラピー基地」「セラピーロード」などで活動する機会もあり、自治体や観光団体、福祉施設などと連携したプログラムにも関わることができます。

🔍 森林セラピストに役立つ“心の学び”とは?

森林セラピストとして活動するうえで、
**「人の心に寄り添う力」**はとても大切なスキルです。

自然とのふれあいに加えて、心理学的な視点を学んでおくことで、
参加者の感情や反応への理解が深まり、より丁寧なサポートができるようになります。

なかでも、**人間関係の本質をやさしく解き明かす「アドラー心理学」**は、
対人支援に携わる方にとって非常に学びがいのある分野です。

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興味が出てきた方が気になるどんな人が向いているのか

人と関わるのが好きな人

  • セラピーは参加者との対話や信頼関係が土台になります。話を聞く力、相手に安心感を与える態度が求められます。

自然環境への理解と関心がある人

  • 樹木の種類や季節による森の変化を観察し、それをセラピーに生かせる力があると強みになります。

状況に応じた判断力・安全管理の意識

  • 屋外での活動では、天候や体調変化への対応も不可欠。冷静に判断し行動できる力が必要です。

学び続ける意欲がある人

  • 森林医学やメンタルヘルスの分野は進化し続けているため、常にアップデートする姿勢が大切です。

また、「保育士」「介護士」「看護師」など人と関わる職種からの転身や副業としても親和性が高く、“人を癒したい気持ち”を自然の中で生かせる仕事といえるでしょう。

活躍の場と実例紹介

自治体や観光地での取り組み

森林セラピストの働き方はさまざまで、専業の人は少ない一方、週末副業や地域活動として携わる人が増えています
収入面は、業務委託やガイド料(1回あたり3,000円〜15,000円程度)などが中心です。
ツアー企画や講師業を組み合わせることで、フリーランスとして収益化を目指す道もあります。

実際に例を挙げると

長野県・伊那市では、森林セラピーロードを整備し、地元の森林セラピストと観光協会が連携して、都市部からの来訪者観・光者向けにプログラムを提供しています。

高知県・四万十町では、「森林と川の癒し体験」としてリトリートツアーを展開し、森林セラピストがガイド役を務めています。

これらの取り組みでは、森林セラピーが単なる観光ではなく“体験型の健康資源”として位置づけられているのが特徴です。
また、地域住民の健康増進の一環として、ウォーキング教室やリラクゼーションイベントに森林セラピーを取り入れる事例もあり、地域の福祉・健康・経済を支える新しい視点の仕事として注目されています。

医療・福祉との連携の可能性も

森林セラピーの効果が科学的に証明されてきたことで、医療や福祉との連携にも広がりが出始めています

  • うつ症状や不眠、ストレス障害の軽減を目的としたメンタルケアの補完療法として、クリニックと連携した「自然療法プログラム」が試みられている地域もあります。
  • 高齢者施設では、デイサービスの外出イベントとして森の中での軽運動や自然観察を取り入れ、認知機能の刺激や心の安定につなげている事例もあります。

特に、医師や看護師、介護士、心理士などとのチーム連携ができれば、森林セラピストの存在価値はさらに高まります。
今後は、「処方箋としての森林セラピー」が医療の現場にも広がっていく可能性があり、予防医療や地域包括ケアの一端を担う仕事としても期待が高まっています。

気になる給料面ですが

森林セラピストの活動は、自治体や観光地、医療・福祉施設などさまざまな分野に広がっていますが、その働き方はフルタイムから副業・ボランティア的なものまで多様です。

気になる収入面ですが、森林セラピストは民間資格であり、国家資格のような平均年収データは存在しません。ただし、次のような形で報酬を得るケースが多いです。

  • 自治体や観光団体からの業務委託(イベント単位・日給5,000円〜15,000円)
  • 地域ツアーやリトリート体験のガイド料(1回あたり3,000円〜10,000円程度)
  • 自営業・フリーランスとして活動し、自然体験教室やワークショップなどを独自開催

まだ専業で生活していく人は少数派ですが、他の職業と掛け持ちしながら副業・地域活動として実践している人が多いのが現状です。
今後、森林セラピーが社会制度や医療分野と結びつくことで、より安定した働き方が広がる可能性もあります。

将来性と広がる可能性

メンタルヘルスへの貢献

現代社会では、ストレスや不安、孤独感といったメンタルヘルスの問題が深刻化しています。心療内科やカウンセリングといった対処的な支援だけでなく、“予防”の観点からのケアが求められる中、森林セラピーのような自然療法に注目が集まっています。

実際に、森林浴によるリラクゼーション効果や副交感神経の活性化、ストレスホルモンの低下といった科学的根拠が蓄積されており、医療・福祉分野でも関心が高まっています

特に、以下のような場面での導入が進みつつあります:

  • うつ病や適応障害からのリハビリ支援として
  • 不登校や引きこもり状態の若者への社会復帰プログラムとして
  • 看護・介護職などハイストレス職種のセルフケア支援として

今後は、保険適用や自治体事業としての正式導入などが進めば、森林セラピストが果たす役割はより大きくなっていくでしょう。
「心のケア × 自然療法」という視点で、新しい時代の健康サポート職として期待されています。

地域資源を活かす新たなキャリアの形

森林セラピストは、「人を癒す仕事」であると同時に、地域資源を再発見し、価値に変える仕事でもあります。

たとえば、

  • 利用されなくなった里山や遊歩道をセラピーロードとして再整備
  • 地元の農産物や温泉と組み合わせて**“癒しの滞在型観光”を開発**
  • 森林セラピーを体験した参加者が、地域ファン・移住希望者になる など

ただの“ガイド”にとどまらず、地域おこし協力隊や観光企画、福祉ボランティアなどと連携しながら活動している森林セラピストも増えています。

今後は、林業や観光業、福祉、教育との複合的な関係の中で、「自然と人をつなぐ地域内専門職」としての地位が高まっていくと考えられます。

副業・週末活動から始める人も多く、地域に根ざした自分らしいキャリア形成の入り口としても注目の存在です。

まとめ:自然とともに歩む、新しい働き方の選択肢

森林セラピストは、まだ広く知られている職業ではありませんが、心と体の両面から人を支える、これからの時代に必要とされる存在です。
ストレス社会のなかで、自然とのつながりが見直される今、「癒す」という行為は医療や福祉の現場だけでなく、地域や観光、教育の分野にも広がっています。

資格取得にハードルはありますが、国家資格ではなく民間資格であるため、今の仕事と並行して学び、活動を始めることも可能です。
また、都会に住んでいる方でも、週末だけ自然と関わる副業やボランティア活動として関心を持つ人が増えています。

「自然が好き」「人と関わる仕事がしたい」「ストレスケアに関心がある」
そんな方にとって、森林セラピストは自分自身の人生も豊かにしながら、誰かの役に立てるキャリアの一つになるかもしれません。

知られざる職業のひとつとして、森林セラピストという選択肢を、ぜひ心に留めてみてください。

この記事が、あなたの次の一歩を考える小さなきっかけになれたなら幸いです。

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